VOL.9  ライトアツプで創出する都市景観


 わが街の景観の向上を図るためには、昼間のみならず夜間についても考慮しなければならない。景観を構成する要素には、「樹木」「水」「石」「ストリートファクチャー」など様々あるが、今まで注目されなかったものとして「光」がある。
 夜の景観を彩る照明に関しては、従来「百万ドルの夜景」といった観光的な観点、自動車走行の安全性の観点、防犯上の観点からの捉え方がなされてきたが、最近は景観を含めた都市の環境的向上といった観点から捉える都市が増えてきた。
 都市では生活の多様化により、生活時間も多様化し、夜間の生活時間も増加している。24時間営業のコンビニ等の増加に見られるように社会全体が夜型に移行しつつある。
 わが街も例外ではない。


都市環境照明の歴史

 都市環境照明の状況をヨーロッパ中心に見ていくと、一番最初はフランスのルイ14世時代(16世紀)で、当時の警察が命令を出し、午後9時以後は一晩中、通りに面した窓を点灯したことに始まる。数年後には、パリで最初の街灯が建物から斜めにつき出したさおの先にランプをつるす形で実現した。その後、ヨーロッパ各国で街灯が設置され、17・18世紀のガス灯の時代を経て、20世紀の電灯に至っている。1918年には、ストラスブール大寺院をを陸軍の投光器で照明したのを皮切りに、1928年の終戦記念日にはパリの凱旋門が照明され、第二次大戦中を除いて、現在まで続いている。次いでコンコルド広場・マドレーヌ寺院が照明された。1930年代には、電力会社が何かにもっと電気を使ってほしいと考え、地方の由緒ある建造物の実験照明を行ない、これが大成功し、パリをはじめ地方の小都市にも、環境照明を普及するきっかけになった。
 現在では、パリで140ケ所、9500台の投光器で照明を行ない、市民や観光客を楽しませている。ロンドンでは、1930年代から都市照明が実験され、新たに1970年代より「ライトアップテームズ計画」と称して、テームズ河畔の主要な建物や橋、なかでもバッキンガム宮殿などを照明することによって、河畔の活性化を目指した。特筆すべきことは、計画途中でオイルショックによる省エネ論議が巻き起こったにもかかわらず、その必要性を認めた市民の支持により、1975年にこの壮大な環境照明計画は完成した。
 ロンドン・パリのみならず、アテネやアムステルダムなど古い歴史を持つヨーロッパの都
市のほとんどは、規模の大小はあれ、何らかの都市照明を行なっている。これは単に、名所
旧跡に投光照明をするというだけではなく、都市全体の夜の照明を考えた上で、都市のスケ
ールや歴史の景観など、様々な視点で計画され、夜間でも都市構造が明確にわかるようにな
っている。
 一方わが国の場合、盛り場の商業照明や道路照明は盛んであるが、住宅地や公園などの照
明は暗いようである。
 また、神戸の夜景、函館の夜景なと眺望景観や都市のシンボル(タワーやお城の天守閣)
の照明、例えば、東京タワー・大阪城など各地に見られるが、観光的要素が強い。しかし、
最近はあらゆる都市で、モニュメント・公園・歴史的建造物・橋・樹木などの市民生活に密
着した施設を照明して、夜間景観の向上に資している例が見られる。
 大阪市においては、「ライトアップ計画」として公会堂・美術館・橋梁・公園等を照明し
て、夜の美観・にぎわいを生み出しており、市民からも好評である。札幌市では、冬の間に
大通公園に「ホワイト・イルミネーション」と称して照明をほどこし、仙台市でも十二月に
は、定禅寺通りの「スターライトファンタジーSENDAI光のページェント」で冬のイベント
を行っている。その他、京都・神戸・熊本・広島・大津・横浜市などでも試みている。


八戸大橋のライトアッブ

 わが街の夜の景観も年々魅力あるものになりつつある。八戸百景の応募にも夜景が多く、
市民投票にも夜景に人気が集中していた。また、冬は街のあちこちで樹木を使ってクリスマ
ス照明が行なわれたり、中心商店街の街灯やイルミネーションも以前にも増して演出効果が
あがってきている。なによりも、昨年九月の八戸大橋のライトアップは、多くの市民に共感
を得、また一味違った夜の景観を堪能することができた。
 行政側では、八戸大橋のライトアップの目的と効果について次の点をあげている。

@ 港の夜間の魅刀ある景観の創出
A 夜間の市街地の活性化
B 観光への魅力づくり
C 市民の潤いと安らぎの提供
D 航行船舶の安全性を期す

 しかし、この八戸大橋のライトアップだけでは、目的や効果は何もあがらないたろう。も
っと具体的に、継続的に、夜間の魅力ある景観を創出し、観光への魅力づくりをするために
はガイドプランが必要であろう。特に、冬のわが街は暗いイメージの街のような気がする。
 また、まだまだ街灯は未整備でもある。

都市景観ガイドプラン 八戸ライトアッププラン

 魅力的な都市景観づくりの一環として、夜の都市景観を創出する。八戸大橋のライトアッ
ブを契機として、市内にあるシンボル的な建造物や優れた建物・橋・樹木・骨格的な街路を
照明することによって、明るく美しい八戸の夜の魅力を引き出そうとするものである。
 そのため
@ 都市景観のガイドプランを作成し、その中で都市環境照明の位置づけを考えたり、独自
に八戸ライトアップランも考えられる。
A 被照施設として価置のあるランドマーク・彫刻・歴史的建造物・樹木などを選定する。
B わが街でも、冬のイルミネーションがあちこちでみられる。これらは一定期間(例えば
十二月)にコントロールを行ない、すぐれた環境照明をした民間団体を表彰し、市民の
照明への関心を呼び起こす。
C 都市環境照明について、電力料金の軽減等の優遇措置を図るように努める。

環境照明を行なう所

ィ 新井田川沿いの河口両側に街灯
ィ 蕪島(海猫に影響の少ない程度)
ィ マリエント
ィ 八戸藩角御殿表門
ィ 対泉院山門
ィ 大慈寺山門(糠塚)
ィ 南宗寺山門
ィ 長者山男坂
ィ 市民広場の噴水
ィ 長根ケヤキ樹群
ィ 河内屋橋本合名会社事務所
ィ 旧旭商会
  その他


景観を眺める公園・休憩所があってこそ

 最後に、八戸大橋のライトアップで観光の名所ができて、大喜びの人々もいる。はたして
そうだろうか。きっとその人々らは、車から見たり、眺めたりするだけで何も疑問がわかな
いのだろうか。
 市民には、その景を眺めながら会話を楽しんだり、ぼんやり眺めたり、さまざまな行動が
予想されるが、一方でそのためのトイレの問題・ベンチ・休憩所が必要とされる。現時点で
は、そういう場がない。廻りにあるのが漁具やゴミの山では、あまりにも情緒がない。やは
り公園を整備するべきである。蕪島にも公園が整備されつつあるが、もっと設計者は自分が
利用する立場になって素敵な公園を設計したほうがよいのではなかろうか。
 八戸港ポートアイランドにかかる「仮称・八戸べイフリッジ」も平成七年の完成時には、
ライトアップされる予定である。そして、ポートアイランドにも緑地が計画されているが、
例えば築山を設け、海から市街地を望めるような公園など、魅力あるデサインで市民に親し
まれることが大切だと思う。将来、八戸港は横浜港・神戸港に近づくと言われるが、市民に
も海を見渡せる場が解放されていってこそ、一歩ずつ近づくのかもしれない。
 わが街も、様々な構築物が建設されるが、デザイン面で工夫が足りないように思う。皆さ
んはどうお思いだろうか。
(参考文献―『環境照明のデザイン』石井幹子著・鹿島出版会)