VOL.8  樹木・緑地保全による都市と自然の共生



 本誌十二月号の表紙の八戸グランドホテル前の柿の木は、市民に惜しまれながらも宴会場
の増改築のため伐採され、今や姿・形はもうない。
 この柿の木は、藩政時代に番町が侍屋敷であった頃からの木で、歴史の生き証人として、
又、通行人に四季の移ろいを味わせ、十二月にはクリスマスツリーとして市民に親しまれ、
何よりも二十五万人都市の中心街に古い柿の木があるのは、他市に例がなかったのではなか
ろうか。そう思うと、「保存したい」というのは所有者でないものの一方的な意見ではある
が、伐採されたことは残念であった。欲を言えば、やはり設計段階において、この柿の木を
生かしたデザインにしてほしかったものである。予算の都合もあろうが、今や建築物は「い
かに環境を生かし調和したデザインにするか」という設計思想が大事になっている時代でも
ある。
 なお、グランドホテル側では宴会場完成の際に、新たに柿の木を植栽するということであ
る。
 市内には、この柿の木の他にも多くの巨木・古木などがある。一方では古い建築物などは
残したい建物として選定され、市民の関心を集めている。建物は傷むと修復したり、最悪の
場合でも復元・再生ができる。又、草花や灌木などの小さな植物は、枯れたり、破損した場
合、とりかえることができる。しかし、命ある樹木は、一度伐採すれば、同じ樹木になるま
では何百年も年月を要するのである。何よりも、地球環境問題の重要性が問われる中、街の
中に息づく樹木は、子どもたちに対する自然保護教育の普及となり、そこから生きものと緑
を大切に扱う心が芽生えるのではなかろうか。
 わが街八戸は、緑が少ないとよく言われ、一方で、樹木や樹林を伐採しながら、もう一方
では植栽を進めている。街の中に線をふやすには、施設緑化や街路樹の整備、公園緑地、オ
ープンスペースの緑化など新たに創出していく方法と、樹木保存や緑地保全等のように保存
していく方法が同時に進められなければならない。


都市の美観風致のために樹木保存

 わが国では、都市の美観風致を維持するため、樹木保存に関し必要な事項を定めもって都
市の健全な環境の維持及び向上に寄与することを目的として『都市の美観風致を維持するた
めの樹木の保存に関する法律』(昭和三十七年法律百四十二号)を定めている。
 そして都市の美観風致を維持するための樹木の保存に関する法律施行令の基準では、
●樹木に関して、
(イ) 一・五メートルの高さにおける幹の周囲が一・五メートル以上であること。
(ロ) 高さが十五メートル以上であること。
(ハ) 株立ちした樹木で、高さが三メートル以上であること。
(ニ) つる性樹木で、枝葉の面積が三十平方メートル以上であること。
●樹木の集団については、
(イ) その集団の存する土地の面積が五平方メートル以上であること。
(ロ) 生垣をなす樹木の集団で、その生垣の長さが三十メートル以上であること
 これらの基準をみたし指定された保存樹木や保存樹林には、樹種や指定番号などを記載し
た標識を設置するようになっている。主な保存樹木・樹林の指定都市には、函館市・秋田市・
松本市・仙台市・名古屋市・泉大津市・盛岡市など全国いたる所に見られる。
 わが街八戸の場合は、保存樹木の指定文化財(昭和四十八年一月二十四日指定)に、七崎
神社の杉の木(三株)が指定されている。
 その他市内にある樹木の保存候補をあげてみる。
イ 神明宮のイチョウ
イ 根城城址のイチョウ
イ 竜源寺・横のイチョウ(根城)
イ 下長のラクウショウ
イ 蒼前神社のケヤキ(高館)
イ 長者公民館前のシダレヤナギ
イ コウヤマキ(市庁前ロータリー)
イ ヒマラヤシーダー(市庁前ロータリー)
イ エゾノコリンゴ(市庁前ロータリー)
イ 上り街道の赤松(番屋付近)
イ 浮木寺のイチョウ(鮫)
イ 鮫八幡宮のケヤキ
イ 砂森神社のケヤキ(鮫)
イ 柏崎小学校横のシダレヤナギ
イ 類家南団地内のポプラ
イ 松館の臥竜梅
イ 中居林のエゴの樹の大木
イ 沢里神社のケヤキ
イ 毘沙門のイチョウ(田向)
イ 市公会堂の前のケヤキ
イ 長者山の桜(おとぎの森)
イ 三八城公園内のコブシ
イ 更上閣の赤松
イ 市庁内の黒松
イ 市民広場の樹群(ネムノキ他)
イ 小中野・左比代のケヤキ
  その他
 社寺境内にある樹木は、保護されているが、地域住民に親しまれている象徴木や景観木、
または由緒由来のある樹木は、宅地造成や開発行為によって倒木、伐採される運命にあるの
で、早急に対処してほしいと思う。


都市化に伴つてするべき緑地保全

 都市における緑地の保全及び、緑化の推進に関し必要な事項を定めることにより、良好な
都市環境の形成を図り、もって健康で文化的な都市生活の確保に寄与する目的として、『都
市緑地保全法』(昭和四十八年法律第七十二号)が制定されている。わが街八戸でも無秩序
なスプロール化の防止、災害防止などのための緩衝緑地として、また風致景観の優れている
所や、鎮守の森等の緑地が適正に確保されるように、植生図を基に保全し、緑の多い街にし
たいものである。
 他都市の緑地保全指定を挙げると、
イ 苫小牧市=苫小牧市自然環境保全条例による「自然環境保全地区」の指定
イ 十和田市=緑地保全地区条例による「緑地保全地区」の指定
イ 盛岡市=盛岡市自然環境保全条例による「環境保全地区」の指定
イ がある。
 また八戸における保全すべき緑地としては、
イ 南部山周辺のコナラなど
イ 長者の森
イ 上ノ山のケヤキ群(湊)
イ 長根のケヤキ群
イ 市川海岸の松林
イ 諏訪神社境内の樹群
イ 三島神社境内の樹群
イ 新井田山の樹群
イ 高館の杉林
イ 豊崎方面の緑地
イ ホロキ長根の樹群
イ 館越山の樹群
などがある。


総合的な緑化計画 条例・要綱で推進

 街の景観を特徴づけるのには緑は大きな役割をはたしている。また、景観行政を進める上
で大きな威力を発揮するためには、総合的な緑化計画と条例・要綱が一体とならなければ推
進されない。バブル経済の崩壊により、開発ラッシュは息をひそめようとしているが、東北
新幹線盛岡以北が開通した場合、まちづくりにも大きなインパクトがあり、開発ラッシュに
よって、ますます八戸らしさが失なわれていくかもしれない。わが街には、「八戸市生活環
境保全条例」があるが、公害防止だけに限定せず、もっと枠を広げて、アメニティー環境を
創造する一つとして、八戸市民の環境を守る条例に改めることが必要と思われる。

 わが街八戸も、機能一点張りの都市から、潤いがあり一年中楽しく自然と共生できる都市
への脱皮が望まれるのではなかろうか。


八戸市民の環境を守る条例(案)
(目的)
 現在及び将来にわたり、本市のもつ豊かな自然環境や文化遺産の保存・活用・創出を図り、
快適で個性的な都市景観を形成するため
(地区等の指定)
 市長は、自然環境の保全等の伐採を図るために必要があると認めるときは次表の下欄に掲
げる緑地、樹木、地区又は歴史的建造物をそれぞれ同表の当該上欄に定める地区、樹木、建
造物として指定できる。
環境保全地区――住民の健康及び休養のため又は都市景観上保護することが必要な地区。
保全樹木―由緒由来のある樹木又は住民に親しまれている樹木・景観木。
環境緑化地区――緑地の少ない地域で積極的に緑化を図ることが必要な地区。
保存建造物――由緒由来のある建造物、都市景観上保存することが必要な歴史的建造物。
(概略)