VOL.6  子どもたちが参加するまちづくり

 1.子どもの目から見た町づくりアンケート

 今までの都市づくりでは、例えば道路・公園を作る際に、規格や従来の画一上義にとらわれやすく、それが都市を魅力のないものにした一つの原因でもある。本当にこの街や市民に必要なものを問い直すためには、根本に立ち返って既成の枠にとらわれない柔軟な発想が必要である。
 そこで「子ども」を、未だ大人にならない、肉体的にも精神的にも未熟なものとしてとらえるのではなく、独自の世界と価値観を持った存在として認めて、まちづくりに参加させたい。こういう動きは1980年代に北九州市・川崎市・尼崎市・豊後高田市などでちびっ子景観審議会などが行なわれたり、ある自治体では公園や施設づくりに子どもらの手型を壁や歩道に利用したり、計画のプロセスの一部に公園のアイデアを募集している。また今、環境教育の事要性が叫ばれている。その中にまちづくり学習があり、身近な環境である町(学区)を教室として、自分たちの町から学び、町に対する関心を高めて町を良くしていこうとする感性・行動を身につけ、さらにその未来を考えようとするプログラムもある。それらを参考に「子どもの目・小中野タウンウォッチ」を企画して、今年の1月11日に6年生児童20名(男子8名・女子12名)の参加で行なった。
 子どもの目には大人の考えによるまちづくりがどのように映っているのか、また八戸をどう思っているのか。一つの試みとして十項目のアンケート調査を行なった。その一つに「これからの八戸のまちはどうなってほしいですか?」という質問を設け、その結果は「緑を多くしてほしい」という答えが全員にあった。
 その一部を紹介すれば
(緑をもっとふやしてきれいで、すばらしい町にする。文化も)
(緑が多く公害のない、みんなから親しまれる八戸になってほしい)
(緑をふやしてほこりをなくしてほしい)
(古いいものを大切にして、もっと緑の多いきれいになってほしい)
などである。
 将来の八戸担い手となる子どもたちの意見を聞き人れ、真剣に緑の中の産業都市を築いていくために、緑のマスタープランに従い計画的に植栽しなくてはならないだろう。


 2.子どもによる小中野タウンウォッチ

 @ タウンウォッチ
 子どもたちは、日頃遊んだり生活している所をまちづくりの視点で歩いてみた。そうすると子どもたちは、普段何気なく通る道などでも今まで気づかなかったことを初めて知る喜びを味わって、ますます自分の住む町が好きになるようだ。
 子どもらは小中野地区で最も好きな建物として旧旭商会。またこの地区に加えてほしいものとして、図書館・広い公園・並木・街灯・遊ぶ所・ごみ箱・美術館などをあげている。そしてこの地区を「緑が少なくてなんかさびしい」「落ちついた感じの所、古い建物が多く細い道が多い」「古い建物がたくさんあっていい感じ」などと感じている。

 A 目隠し歩行体験
 街には健常者だけではなく、ハンディーを持った人々も生活しており、小さい頃から相手の立場を理解するうえで目隠し歩行の体験学習をしてもらった。介助者がついてはいるが、店先の看板やフラワーポットが邪魔であり、普段は慣れている車の音や自転車のブレーキの音が、いつもと違って聞こえ怖かった――と感想を述べていた。

 B 地区カルテ―点検から発見へ―
 子どもたちは地区を歩いてまわり、自分たちの住んでいる環境を自分たちで点検し、よく遊ぶところ、好きな所、危険なところ、いやなところなどの地区の課題の発見に努め地図化した。

 C 子どもの目から選んだ小中野八景
 どんな世代にも共通して残したい景観や好きな景観がある。また、老人や子どもなどその年代でしか顕われてこない景観もある。それは近代的な建物であったり、なつかしい思い出の樹木や遊び場などいろいろである。
 今回、子どもたちは
 (1)旧旭商会
 (2)八戸大橋
 (3)新むつ旅館通り
 (4)新湊橋
 (5)千草公園
 (6)諏訪の森
 (7)八戸セメント工場
 (8)常現寺
の八景を選んだ。
 これらの景観を将来にわたって失なわれないように、守ったり育てたりすることは大人と子どもの共同作業ではなかろうか。

 D 小中野物語
 子どもたちが自由にかつ素直に語る小中野の未来像を整理してまとめてしまうのではなく、数々の未来への願いや考えを民話を集めるように20編(30人)を組んで小中野物語と名づけた。この物語には、提案もあれば未来のイメージも書かれている。この子どもらの思いを地区づくりに生かさなければならないだろう。ここで一つの物語を紹介する。

 〈夢のある町〉       I・K 女子
 この小中野にもいがいに、古い建物がたくさんあったのにはビックリしました。とくに感心したのは、旧旭商会でした。それは大正6、7年に作られて、今も大切にされていることです。
 でも未来になると、たぶん高いビルとかが建って、古い建物がなくなると思います。だから私は、古い建物を残して、緑や公園をたくさん作り、みんなが遊べる、夢がある町にしてほしいと思います。
 でもこれはむりだと思うので、少しは私たち、子供の事も考えて未来の町づくりをしてほしいと思います。それに道路を歩いていると、よく白線がなくて安心して歩けない危ない所がたくさんあります。ですから、もう少し道路を工夫してほしいと思います。
 これが、私のおねがいです。
私は思いました。この小中野は大きい建物があるところと、広い土地があるところと大きく二つにわかれていると思います。
 だから、土地があるところは、公園などを作ってほしいです。そうすれば、大きい建物・古い建物・緑・公園の3つができるのでとてもすばらしいと思いました。


 3.大人と子どもの共同で

 市民によるまちづくりをより効果的に進めてゆくための一つに、まちづくりに関する環境教育を充実させていく必要がある。現在の義務教育では、小学三・四年生の社会科で副読本を参考に地域学習が行なわれている。しかし、これからは情報型の地域学習を一歩進めて、まちづくり学習(探検ゲーム)として授業の一貫として、また週五日制による休日の地域社会のプログラムとして、これから大いにまちづくりに子どもたちを参加させる機会をふやしたい。大人と子どもが一緒になって共同で白分たちの住んでいる地区を歩いて考えたり、その地区で選んだ八景の場所を花で飾ったり、様々な地区での試みは大きな可能性を持っていだろう。そして各地区がそれぞれ独特の雰囲気を作りだしたらおもしろいと思う。上(行政)からのまちづくりとは別に、下(地区)からの盛り上がるまちづくりもまた、必要だ。子どもたちはその中の一員としてかけがえのないすばらしい目を持っている。
 私の好きな一文がある。
「私は三〇年もの間、都市計画のお話をし続けてきました。私は世の中でこんな大切な、こんな面白いお話しはないものだと思っています。然し結局大人はダメでした。大人の耳は木の耳、大人の心臓は木の心臓です。そして、大人は第一美しい夢を見る方法を知りません。
 夢のない人に、都市のお話しをしたってムダなことです。子供は夢を見ます。星の夢も花の夢も、天の夢も、百年後の日本の夢も。それは子供の耳が兎の耳の様に大きく柔らかく、子供の心がバラの花の様に赤くそして匂うからです。子供にお話をすることを忘れていた私は何という手ぬかりをしていたことでしょう。それに第一子供達こそ、明日の日本の建設者です。………
子供達よ
あなた達の手で本当に美しい、日本を造って下さい。(以下略)」
(『私達の都市計画の話』石川栄耀より)

〈参考資料〉21はちのへ研究『子どもの目――小中野タウンウォッチ』平成3年2月