VOL.5  「福祉の街づくり」のための環境整備指針

 地域住民に誇りを与え、独自性の魅力で若者を呼び戻し地域を活性化し、あわよくば来訪者(観光客)を増やしたいという願いから各地で「むらおこし」や「まちづくり」がブームであり、一方、わが街でも十三日町・三日町など中心商店街の整備や公共建築の新築・改築ラッシュである。
 しかし、「まちづくりはすべての人々のため」という基本的な視点が忘れられているのではなかろうか。「すべての国民は、健康で文化的な最低限の生活を営む権利を有する。国はすべての生活部面について、社会福祉・社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」(日本国憲法第25条)とあり、この憲法がまちづくり思想の基本である。
よちよち歩きの幼児・乳母車を押す人・妊婦・病後の人・足腰の不自由な人・杖や車椅子に頼る人・高齢者など何らかの身体的ハンディキャップを持つ人々や日本語を解せぬ外国人など、障害のある人もない人も子供も高齢者も、あらゆる人々、あらゆる年齢層を対象として考えなければならない。
 さらに大事なことは、明日にでも健常者も障害者になりえる受障の平等性をもっている環境にいることと、老齢化の問題である。歳をとるとともに歩行が困難になったり、目や耳が不自由になるなど機能が低下することを何人も避けて通ることはできないということである。


 1、障害とは何か。

 国連では障害を三段階に分けて説明している。それは、
 @インぺェアメント(損傷・損害)
 Aディスァビリティー(障害)
 Bハンディキャップ(不利な条件)
 @は身体の受障そのものを指し、Aはその結果ひきおこされる能力の違いを指し、Bは能力を発揮できない社会体制や環境を指している。これらが使われる対象分野は、@は主として医学の分野で、Aは主としてリハビリテーションの分野で、Bは社会の受け入れ分野または福祉関係とも言える。豊かな生活環境づくりやまちづくりはBにあたり、社会の物的環境を今一度見直して幅広い人間のありさまを受けとめる環境を再考するように促している。


 2、福祉モデル都市の指定

 この福祉都市は、1973年7月26日に厚生省社会局により身体障害者福祉モデル都市設置要綱なる通達により、、身体障害者の住みよい環境づくり等を目的として、原案として人口20万人以上の市が指定された。
 八戸の場合は、1981年の国際障害者年と時を同じくして「障害者福祉都市」に指定され、次の内容で実施された(2ヶ年事業)。
 @生活環境改善事業
 A障害者福祉サービス事業
 B心身障害児早期発見療育推進事業
 C市民啓発事業
など。

 この指定を契機に都市構造を根本的に見直すべきであったにもかかわらず十年たった今、一部の点で改善されても街全体としては障害者にさまざまな壁が残っている。建設省では、今年度から高齢者も含めた障害者の住みよい環境づくりを進めるために「福祉の街づくりモデル事業」を始めている。


 3、各地で進められる福祉のまちづくり運動

 よくキリスト教社会では障害はありながらも、やはり同じ人間であるというところを大切にして、すべての人々がまちづくりの枠組に入っており、障害者が住みやすいように環境を整えることが古くからごく自然に行なわれていた。
 これに対して仏教社会では、障害は前世で悪いことをした結果であるといった因果応報の考え方が根底にあるためか、障害者を疎外し、障害を恥じる傾向がある。その結果、障害者を訓練や治療により「正常」に近づけようとする意識が強く、障害をあるがままに受け入れ、社会的不利をなくそうとするまちづくりがなされてこなかった。これらの反省や福祉のあり方が従来の施設福祉から在宅福祉・地域福祉へと考え方が変わり、各地で福祉のまちづくり(人間中心のまちづくり)がなされている。
 郡山市では当初、郡山青年会議所が中心となり、多くの障害者、ボランティア学生、一般市民等が参加し「福祉都市づくりを進める会」として運動が進められた。また富山市では「富山障害者のためのまちづくり研究会」が活動し、点検調査や市側との交渉・学習会などを開催しており、名古屋市・神戸市・芦屋市・岡山市・福井市など全国各地でも盛んに行なわれてきている。
 障害者のための環境基準としては「町田市の建築物等に関する福祉環境整備要綱」(1974年7月)、京都市の「福祉のまちづくりのための建築物環境整備要綱」(1976年4月)、「横浜市福祉の都市環境づくり推進指針」(1977年2月)、新しいものでは「長崎県やさしさの街づくり整備指針」(1991年4月)で、全国初のアイディアが盛られている。
 これらは、八戸で進めていく福祉のまちづくり運動に参考になるのではなかろうか。


 4、車いすウォークで見つめた八戸の現状

 「身体に障害を持つ人たちにとって八戸市は冷たい街――」。これは9月8日に八戸障害者自立の会と八戸あしたの街委員会が企画した車いすウォークの現状結果である。今回は新人議員九人を迎えて中心街を一時間半にわたって歩いた。私も介助者と車いす者の2つを体験することができた。やはり、車道と歩道の間の3〜5センチの段差やマンホールとの段差、そして何よりも歩道のわずかな傾斜には悩まされた。また、ホテルやデパートなどの公共施設も「エレベーターのボタンの位置が高くて届かない」「身障者用トイレが一階にない」など、今一つの配慮が足りない。障害者だけでなく健常者でさえ冬の歩道は危険であり、八戸への訪問客に不評である。また歩道の電柱も通行をさまたげている。
 八戸では八戸障害者自立の会が中心となり、議会に対して福祉の街づくりのための環境整備指針を作ってほしいと陳情を行ない採択されたが、また形になっていないのが現状である。
 よく障害者が街に出てこないので整備しても無駄だという意見や、車いすも改良すれば今の段差でも大丈夫だという意見などを聞く。けれども、やはり都市というものは、すべての人々に利用しやすいようにまず整備されていなければなるまい。古くから日本には良い見本がある。それは長者山にもある男坂・女坂で、健康な人は男坂を、そうでない人は女坂をという独特に考えられた歩行者空間である。今、街に求められているのは、このような選択できる街の構造ではなかろうか。


 5、二十一世紀に向けて3つの課題

 21世紀の高齢化社会に入ってからの財政難な時ではなく、少し余裕のある今だからこそ、障害者と共に生き、共に住める環境づくりをしなければならない。
 @ 環境整備指針の策定
 八戸市の場合、公共施設には障害者のための配慮がなされているが、スロープが急勾配であったり、トイレが身障者用でありながら狭く車いすで通るにはギリギリであるなど、必ずしも充分でない。環境整備指針が早く策定されることが望まれる。そのための市民の世論と運動の盛り上がりを期待したい。

 A まちづくり協議会の設置
 まちづくりで大切なことは住民参加である。まちづくり協議会を作り、具体的にまちづくり政策を点検し提案する。もちろん身陣者の参加が必要である。

 B まちづくりは人づくり
 障害を持った人たちと共に生きていけるやさしいまちづくりがなされれば、障害者との交わりによって、人間として生きる価値の尊さや思いやりの心、相手の痛みを感じることのできる心などを教えられ、健常者も成長すると同時に障害者も街も成長するのではないだろうか。

 21世紀に向けて3つの課題を掲げた。八戸市でも福祉環境整備指針だけにとどまらず、多様な住民と共に生き共に住める環境づくりをするために、道路の段差解消はもとより、バス停の乗降のしやすさ、サインの読みやすさ、判りやすさなど福祉施策の枠を越えて、まちづくりの施策の領域でわが街を考えていく必要がある。

 最後に、ノーマライゼーション思想の父、デンマークのニルス・エリック・パンク・ミケルセンの言葉を紹介しよう。
 「ハンディを持った人に何かしようとする時に一番大切なこと、それは"自分自身がその立
 場に置かれたら、どう感じ何をしてほしいか"本気で考えてみる姿勢である。」
〈参考文献〉「福祉のまちづくり」日比野正己著(水曜社)