VOL.3  21世紀に向けての都市の個性

 高度経済成長の波は、都市自身が持っていた個性を奪い、日本中に同じような都市を誕生させた。その反省から地域の個性を生かしたまちづくりが各地で進められている。ある歴史的町並みとして有名な町では、たとえ史跡などが少なくても、町全体をある種の歴史的雰囲気や落ち着きを保つために環境デザインに工夫と努力をして自分たちの住む町を魅力あるものとしている。また、函館市や小樽市では、近年利用されていなかった古い建築物をリニューアルし、横浜市や神戸市とは雰囲気の異なる港町の顔づくりに成功している。
 一方、八戸市は「昨日と明日の同居する町」と言われるように都市としての遅れた面と他より進んだ面があり、今では明治・大正時代の建築物が少なく、街並みも雑多である。このまままちづくりを進めていけば、都市間競争にも負けるし、また企業は進出したが他都市からは人が集まらず、八戸市周辺市町村の人の就業の場となり人口増加も期待できないのではなかろうか。やはりこれからの21世紀に向けては、八戸らしさ=八戸の街がもっている個性を生かし、そして人間味のある空間や文化的施設をつくり、人々の精神的やすらぎの場が多い街の姿が望まれる。生活の基本である「棲まう」「棲まいつづける」ための最も重要な条件は雇用機会ではなく、各人にあった生活環境の整備を進めることで、ゆっくりではあるが人口が定着することなのではなかろうか。
 都市の個性とは、長い歴史の中での風土・文化・生活という現象となって培われてきた総体の姿を指し、それが失なわれると、そのもの(地域)の社会的存在意義が崩れてしまう。つまり「自己の文化的存立基盤」であると言われる。
 八戸市はどんな街なんだろう。八戸らしさをイメージするものには、「うみねこ」「三社大祭」「えんぶり」「八幡馬」などがある。これらは八戸のシンボルにはなりえるが、これが失なわれても八戸らしさは存在するだろう。また、「漁業の町」「北東北の産業都市」「イカの街」「港のある城下町」と言われてもすぐ「八戸」とは思い浮かばない。では八戸の地域の個性として何を採ればよいのだろう。
 私が思うに豊かな自然であろう。25万都市で、山はあり、海があり、二本の大きな河川がある。自然は、一つとして同じものは存在しないので、これをまちづくりにおいてよく保全されれば、そのままで立派な地域の個性になりえる。それを無神経にコンクリート護岸で固め、画一的な土地造成でならしてしまうから個性が失なわれていくのである。「八戸百景」選定の際も自然的景観が多く取り上げられ、また、転勤で来た人も「自然が近くにあっていいですね」という。確かに自然に恵まれているとは思っていても、その自然がいつまでもあると思えない今日この頃である。身近な自然はいつの間にか人工的に改変されている。やはり第一に八戸固有の地形(海・川・山など)の特徴を生かし、それらを緑のネットワークで結び、生活環境の基盤を重点整備して、産業を押し進めるように優先順位を序々に変えていかなければない。何よりも個性をつくる源は、市民の思いや意見・決断力であり、他人まかせで決断と行動のない街は発展しない。良いものは良いもの、悪いものは悪いものと言い、八戸の行政の質も同時に高めなければならない。

 ★ 地形の特徴を生かし、八戸らしさを創り育てる ★

 まちの姿を特徴づける一つとして地形があり、よく眼をこらして見れば八戸の地域のもっている特徴がこれらに多く隠されている。しかし、現代の土木技術は地形までも一日で変形させる力を充分もっており、高度経済成長時における、効率性・機能性・利便性を先行させて地形を平担にしてしまうのは、豊かさの源を自らぶち壊しているのではなかろうか。八戸の地形のようにあまり変化がないのならば、なおのこと地形(多くの素材)の特徴を生かし、それらを強調し、大事に育て創りあげていかなければならない。それが他の都市と違って存在し続けることになり、八戸らしい豊かさを生み出す一つともなる。

@ 眺望できる場所を大切に
 八戸の中心地は沖積平野で、周辺の多賀台・日計・田面木・根城・大杉平・白銀・鮫などは段丘で形成されている。その丘陵の鼻の部分の斜面などには、まだ緑地が残っている所も多く、特に緑が少ない街と言われればこそ、緑を増す努力と共に守る努力を怠ってはいけない。特に丘陵の鼻の部分や高みなどは、街を見渡せ、眺望のきく場所は大切である。自分の街を一望できる喜びは気分爽快であり、街への興味を引きやすく、また街を知ることにもなる。
 また、八戸は「海と共に生きる街」と言われる。それならばなおのこと海を望める所はもっと市民にとって大事にし、開放すべきである。高台から見る八戸港全景も趣きがある。だからもっ海を眺望できる喫茶店やレストランが多くあってほしい。そして、眺望をさまたげないようにスカイラインを保護するために、建築物の高さ制限が必要である。
 眺望できる場所は、夜景も見られる。できることなら上空の大気をもっと澄明に保つように努力すれば、八戸大橋のライトアッブも加わり、八戸の夜景は誇れるものになるであろう。

A 斜面緑地を守る
 段丘の斜面には、今もって緑地が残っており、八戸の景観を大きく特徴づけている一つでもある。斜面緑地の樹木を伐採すれば、土砂くずれの可能性もあり危険である。なによりも宅地造成・観光開発の名のもとに景観が破壊されている。緑のネットワークで自然の骨格を作りあけていくために緑地を保全しなければならない。

B 坂道をもっと生かす
 八戸にも、坂が多くある。坂道は、歩くには大変なので、なおのこと遊び心のある魅力あるデザインで整備したい。